米粉と栄養

☆ 米粉の素材としての特性と利用

グリコ栄養食品株式会社

食品原料統括部 営業部 技術サービスグループ

當麻 義人

【1.はじめに】
 昨今の世界の食糧事情は大きく変化しており、地球温暖化による異常気象で穀物の出来高に大きな不安がある一方で「穀物起源のバイオ燃料の活用」によって穀物資源を食糧・飼料業界とエネルギー産業が奪い合うという現象を引き起こしている。また、人口大国の経済発展に伴う食糧需要の増加もあってわが国の食糧の安定供給を脅かす事態となっている。
 一方、わが国の食糧事情はというと食糧自給率は年々減少しており、我々が口にする食品に関してはほとんどが輸入に頼っているのが現状である。
 このような状態の中、新規米粉を使った食糧自給率向上が叫ばれてはや10数年、当時は地産地消の国産米粉を使った米粉パンを学校給食に導入しようという動きから始まり、当社も新潟で始まった新規米粉・米粉パンの開発に携わらせていただき、まだ米粉食品がほとんど知られていない時から各社と共に米粉食品の普及活動を行ってきた。その結果、今では様々な地域で米粉パンが導入され、広く米粉パンが認知されるようになってきた。また、米粉パン以外にもロールケーキやシフォンケーキ、米粉麺などの米粉食品も徐々に普及し、その姿を見るようになってきた。消費者の米粉食品に対する認知度が上がってきており、流通業界も米粉食品に対する関心が高まっていることから、今後ますます米粉食品は普及してくるのではないかと考えられる。

【2.お米の麺の開発】
 米粉パンについてはすでに語るまでも無いと思うが、米粉パンが全国に普及してくるとパンと同じ「粉食文化」の代表である「麺」はできないのかという話が出てくるのはいたって当然のことである。米で麺を作る場合も、米粉だけでは麺にならないのでパンと同じように小麦グルテンを添加すれば形にはなるが小麦グルテン特有の臭気が目立ったり色がくすむなどの問題がある。またα澱粉を添加したり米粉を蒸練しても麺はできるが、乾麺にしないとα澱粉が老化し、生麺の状態での保存が難しいといった問題もある。そこで当社はつなぎ効果のあるものを複数配合し、尚且つ米の風味を損なわないよう各々のつなぎが最小添加量で効果が上がるように工夫した米麺用つなぎミックス「ヌードルバインダー1」を完成させた。
 ヌードルバインダー1のコンセプトとしてはご飯の様にもっちりした食感になること、白くて綺麗な光沢がありつるみのある麺に仕上がること、ミキサーの種類を問わず通常のロール製麺機で製麺できることが挙げられる。米粉の種類は選ぶことなく麺を作ることができるが、粗い米粉を使うと食感がざらついたものになり好ましくない。
 米の麺というとベトナムの「フォー」が有名であるが現地では鶏がらや牛テールのスープを使うなど様々な食べ方をしている。米麺も麺である以前に「ご飯」であるという認識から様々な食べ方を考えることができる。例えば冷汁うどん、冷しゃぶうどん等和風メニューは勿論、洋風のメニューにも合うので誰にでも食べ易く様々な食べ方が楽しめる。麺の形状も選ばず、うどんの様な太目の麺やフォーの様な平べったいつるみのある麺もできる。またコンビニで売られているような調理麺の形態でも製造する事が可能である。

【3.様々な食品への米粉の利用】
 このようにして米粉食品がパン・麺を中心に広がってきている訳であるが、他にも様々な食品分野で米粉が利用できる。その特徴としては下記のような事が挙げられる。
①口溶けがよくさらりとしたソフトな食感になる。
②水分を多く含む食品に対してはご飯のようなモチモチ感を与える。
③水分をほとんど飛ばしてしまう食品に対してはカリッとクリスピーな食感を与える。
④配合によっては小麦フリーの食品も製造することができる。
 米粉は小麦粉と違って粉の粒子が硬い為に充分水和せずに粒子として残る食品の場合はべたつきが少なく、クリスピーな食感を与えたりソフト感を与えたりする。それに対して水分の多い状態で完全に糊化すると小麦粉よりも粘度が高くなり、粘りが出る為ご飯のようなモチモチ感が出る。図のアミログラフを見てみると、小麦粉に比べると米粉の方がかなり粘度が高い事が分かる。また、糊を冷却しても老化し難く、小麦粉よりも滑らかさが保持できる事が分かる。

 

4.米粉利用食品の例

①ロールケーキ:最近ではかなり普及してきており、各所で米粉のロールケーキを入手する事ができる。その食感はしっとりとして尚且つ口溶けの良い感じに仕上がっている。

②シュークリーム:シュー皮とカスタードクリーム両方とも米粉で作る事が可能でシュー皮はサクッと軽くて口溶けの良い食感に、カスタードクリームはシュー皮同様口溶けのよい滑らかな食感になる。

③シフォンケーキ:小麦粉で焼いてもフワフワでとろける様な食感のシフォンケーキだが米粉を使うとひときわふんわりし、口溶けの良い食感になる。

 ④プリン:米粉を使ったことによるもっちり感と口どけの良さが共存する独特の食感になり、洋風・和風どんな風味にでも合う。

⑤たこ焼き・お好み焼き:大阪の粉物食品の代名詞であるが、米粉で作るとその食感は小麦粉よりもソフトで口溶けが良い。たこ焼きに関しては中がトロリとして冷めても硬くなり難いので冷たいダシに浮かべて食べる事もできる。

⑥肉まん:米粉特有のご飯のようなもっちり感の強調された食感となり、モチモチして良好な食感を示す。

⑦おやき:米粉パン同様グルテンミックスの入った米粉を使用して作る。小麦と違ってパサツキや口のなかでもたつく感じがなく、もっちりとした団子のような食感が楽しめる。

⑧餃子:麺用のヌードルバインダー1とは別のつなぎミックスを使う事によって餃子の皮を作る事が可能になる。揚げると皮がカリッとしておせんべいのような美味しさが味わえる。他、マドレーヌやクッキー、ラングドシャ、ホワイトソース等米粉の特徴を活かした食品が広く開発されている。

 

5.おわりに

 米粉の「粉食文化」への利用が叫ばれ始めて早10数年、今では米粉パンも色々なお店で購入できるようになり米粉食品は我々の身近なものとなってきた。また、食糧自給率の問題からも米粉は確実に使っていかなければいけない環境である。米粉食品の開発をしていく上では米粉の性質をよく理解した上で食感的な特徴を活かしていかなければならない。弊社もそのような観点から米粉食品の開発・普及に努めていきたいと考えている。また、古来から親しみ、食べられてきた日本人の心ともいうべき米をもっと広く、もっと手軽に、そしてもっと美味しく食べられるよう日々研究を重ねていく事が我々の使命ではないかと思う。

 

 


◊米粉の機能性食品としての魅力と可能性-こまっちプリンなど-

                                                株式会社 四季菜 代表取締役 高橋 眞木夫

 【開発の目的】

 

秋田県は日本有数の米の産地であるが、消費の低迷が進み基幹産業が脅かされつつある。その一方、食の欧米化が進む中、ライフスタイルの変化から生活習慣病の懸念が高まり、特に糖尿病、高血圧などの生活習慣病への対策が国を挙げて展開されている。そうした中で、当社は秋田県総合食品研究所と共同研究を重ね、米と大豆の穀類由来の機能性を活用した生活習慣病症候群に対する栄養機能食品を開発し特許を出願した。今回当該事業を活用し、開発した栄養機能食品の製品化とマーケティングを展開し、消費が低迷する米の付加価値を高め、高齢化社会の豊かな食のライフスタイルを提案している。

 

【地域社会の背景】

 

秋田県は良質・豊富な水に恵まれ、田んぼの土は美味い米づくりと多収に適し、農家は稲づくりの技に熟練している。こうした最適な条件が幾十にも重なり合って、秋田米の美味しい粘りとツヤを生んでいる。秋田のお米の生産量は60万トン、新潟、北海道に次いで全国3位の生産量を誇っている。

 

【産地・地域の現状と課題】

 

あきたこまちは全国でも有数のブランド米であるが、近年減反や消費が落ち込み、転作としてリュウホウ大豆が作付けされている。加工適正も良いことから米や大豆の機能性を高めた食品開発を推進し、地域経済の活性化を図ることが課題となっている。

 

【開発着手の経緯】

 

食生活が欧米化したことなどライフスタイルの変化により肥満や糖尿病、高脂血症など生活習慣病増加の一因となっていると指摘されている。この様な状況下で普段の食事から、生活習慣病の予防のための生理機能を高める食品の開発が必須となっていた。  また、最近の研究では、胚芽と胚乳の間にあるフェルラ酸があり、脳の海馬組織の炎症を抑える働きがあり、アルツハイマー予防として産学で研究を続けている。

 

写真

 

【製品の概要】
生理機能を有する栄養機能食品を開発・販売「栄養機能食品=①米と大豆で活性酸素を消去+②栄養機能」
①活性酸素消去機能:米と大豆の相乗効果による生理機能を活用した活性酸素消去機能で特許出願:「活性酸素消去機能を有する米の加工食品及び活性酸素消去機能が高められた食品並びにその製造方法」(平成22年1月 特許第4431783号)
②栄養機能:生理活性のある栄養機能を有するビタミン類、ミネラル等の添加
 

 

【事業課題】

秋田県と地元銀行の支援で“2011”フードエキスポ香港に出展、米粉スイーツの商品の試食商談を行った。香港や中国本土のバイヤー、デストロビューターに対しアンケートを行ったが、基本的に美味しいし健康志向のコンセプトも理解できる旨、今後の香港における製品開発でブランド化、量目、商流、物流の詰めをすることになった。海外戦略の初めてのケースなので、商談先の要望を形にするべく研究開発を進めたい。

 

【製品戦略/製品名など】

米粉プリン(お米deぷりん)ほうれん草、生姜、かぼちゃ、抹茶、大豆、黄粉、小豆等のフレーバーで相乗効果を謳っている。


 

「時の話題」♦♦♦ Current Topic ♦♦♦

 

10アール当たり1トンめざし進む「多収米品種」の開発 

米粉用、飼料用でも5年間に5品種以上育成が目標

 ジャーナリスト  竹村 晃

 

政府の食料自給率向上政策の一環として、水田の有効利用を図る目的で飼料用や米粉用など、米の非主食用利用に注目が集まっている。「農業者戸別所得補償制度」政策で、飼料用米、米粉用米などの新規需要米の作付け助成(交付金単価)を、10㌃8万円と強化したことも、増産気運に拍車をかける大きな要因だ。ちなみに、農水省がまとめた今年の飼料用米の作付面積は、前年に比べ1万9000㌶も増え3万4000㌶に達し、同じく米粉用米も2400㌶増えて7300㌶になった。

農水省は近年、飼料用米、米粉用米などの利用拡大に向け、「多収米品種」の開発に力を入れ、地域別の適性品種の選定や栽培管理、家畜への給与などについての技術開発を推進し、その成果も全国各地の生産現場に普及し始めてきた。これら非主食用に向けた米生産では、流通価格が主食用に比べ大幅に低いため、多収穫、低コスト生産が求められる。このため、食味は問わず、収量が多く、病害に強く、耐倒伏性や耐肥性にも優れ、低コスト栽培が可能な品種を普及させるのが喫緊の課題となっている。

農水省は昨年4月、農林水産研究開発の10年後の重点目標を示した新たな「農林水産研究基本計画」を策定した。食料自給率50%の達成、農業の6次産業化推進、温暖化に適応した品種・栽培技術の開発などに加え、「米粉・飼料用多収稲の育成」に重点を置いた研究を推進することをうたっている。また、昨年度から、多収米品種開発に向けて新たなプロジェクト研究をスタートさせた。研究期間は5年間で、現在の平均的な飼料用品種より収量が3割程度多い10㌃当たり1トン(玄米)の多収品種を、5品種以上育成することを目指す。同省によると「モミロマン」など既にある飼料用に適した品種の収量は、10㌃当たり800~700キロ(玄米)が一般的。収量を1トンに高めることで、さらに生産コストを抑えることができる。主食用への転用を防ぐため、飼料用米の新品種は主食用米と容易に見分けられるように、色素のある物を育成することも目を引く。新品種の開発と並行して、持続的に飼料用米を生産する栽培技術や、牛や豚、鶏に飼料用米を給与する飼養技術の開発にも取り組む方針だ。

 

メモ「新規需要米」=主食用米の需給に影響を及ぼさない米をさす。(1)飼料用(2)稲発酵粗飼料用稲(ホールクロップサイレージ、WCS)(3)米粉用(米以外の穀物代替となるパン・麺等の用途)(4)バイオエタノール燃料用(5)輸出用(6)青刈り稲・わら専用稲(7)主食用以外の用途のための種子・・・など。

 

◎飼料用米、米粉用米の多収品種として、15~17品種ほどが全国で利用可能だ。主な品種の特性を紹介する。

 

◇「きたあおば」(北海道農業研究センター育成)

北海道での栽培に適する、極多収品種。飼料用に加えて、バイオ燃料用として期待され

る。

◇「たちじょうぶ」(北海道農業研究センター育成)

北海道での栽培に適する、飼料用米と稲WCSの兼用品種。倒れにくく、いもち病に強い、極多収品種。

◇「みなゆたか」(青森県農林総合研究センター育成)

北東北、中山間地向き。障害型耐冷性が強く、低温年でも安定した玄米収量が期待できる。東北地域では早生熟期。

◇「べここのみ」(東北農業研究センター育成)

東北中北部以南向き。飼料米と稲WCS用の兼用品種。全国的にも東北地域でも早生で、「あきたこまち」よりも、早く収穫できる。

◇「べこあおば」(東北農業研究センター育成)

東北南部以西向き。大粒の多収品種。飼料米と稲WCS用の両方に適する。全国的には早生、東北地域では中生熟期。

◇「夢あおば」(中央農業総合研究センター北陸センター育成)

東北南部以西向き。湛水直播栽培に適して倒れにくい稲WCS用の品種。出穂期が「コシヒカリ」より早く収穫可能。

◇「ゆめさかり」(中央農業総合研究センター北陸センター育成)

東北南部以西向き。大粒で収量が多く、バイオエタノール用、飼料用米への利用が期待「ひとめぼれ」より2割増収。

◇「ふくひびき」(東北農業研究センター育成)

東北中部以南向き。全国的には早生、東北地域では中生熟期で、倒れにくく直播栽培にも適する。

◇「ホシアオバ」(近畿中国四国農業研究センター育成)

東北南部以西向き。大粒の飼料用、稲WCS用の品種。米と茎葉の両方が多収で、地上部全体の収量は、一般食用米品種よりも、15%程度多収

◇「タカナリ」(作物研究所育成)

関東以西向き。極多収品種。一穂籾数が多く、止葉が直立して受光態勢が良く、極めて多収で、飼料米や米粉など加工原料用に期待。

◇「モミロマン」(作物研究所育成)

関東以西向き。粗玄米収量と地上部全重収量に優れ、米粉用、飼料米と稲WCS用の兼用品種として期待。

◇「クサノホシ」(近畿中国四国農業研究センター育成)

関東以西向き。飼料用の水稲品種。米と茎葉の両方が多収で、地上部全体の収量は、20%程度多収。

◇「クサホナミ」(作物研究所育成)

関東以西向き。茎葉と子実の両方が多収で、飼料米と稲WCSの両方に適する兼用品種。茨城県などで、WCS用の主力品種として栽培されている。

◇「北陸193号」(中央農業総合研究センター北陸センター育成)

北陸と関東以西向き。米粉用から醸造用まで幅広い用途に向く。倒伏しにくい。高冷地普通期早植栽培にも適応。

◇「もちだわら」(作物研究所育成)

関東以西向きのもち品種。一穂もみ数多く、極多収。米菓や業務用のもち原料に加え、米粉用や飼料用への利用に期待。

◇「ミズホチカラ」(九州沖縄農業研究センター育成)

九州(暖地)での普通期栽培向き。背丈が低いため倒れにくく、20%程度も多収。米粉の加工適性や、パンなどの製品品質が良い。

◇「モグモグあおば」(九州沖縄農業研究センター)

九州向き大粒品種。子実・サイレージ兼用型。背丈は高いが、茎が太いため倒れにくく、収量は一般主食用品種より30%程度も多収。

 

これら品種のほかに、最近では、米粉用品種として、「ふくおこし」(福井県農業試験場育成)や「東北189号」(宮城県古川農業試験場育成)などが、期待されている。

 

◎こうした米粉用や飼料米用の多収米品種の開発が進む一方で、米食の多様化・需要喚起が進む中、生活習慣病の予防や健康に対する関心の高まりから、「機能性米の開発」への関心も高まっている。タンニンを多く含む赤米や黒米品種に代表される古代米ブームが先鞭をつけ、血圧降下作用などが確認される「ギャバ」が多く含まれている「発芽玄米」用には、胚の大きさが普通品種の2~3倍の「巨大胚米」として、「恋あずさ」、「はいいぶき」、「めばえもち」、「はいみのり」などが開発されている。中央農業総合研究センター北陸センターは、たんぱく質の摂取を抑える腎臓病患者向けに低グルテン(たんぱく)米「春陽」を育成したのをはじめ、千葉県も最近、低グルテリン米「ゆめかなえ」を開発した。九州大学農学部の佐藤光教授が「金南風(きんまぜ)」を品種改良した「アミロモチ」は、でんぷんが消化されにくい「難消化米」だ。血糖値の上昇を抑える働きがある。今後は、こうした“健康ライスパワー”にも注目したい。
(終)